潜りすぎたようで
──雪を眺めていると、思うのです。
嗚呼、暖かい──と。
あの、ふわふわな感じがいいのです。
見ていて、暖かくなってくるのです。
……あぁ、確かに。
わたし、『寒い』とか『暑い』って感覚はないんです。
冷たいとか、温かいであれば分かるんですけども。
皮膚がピリついたり、ぼんやりしたりすれば──冷たいとか温かいとか──そう言うのは、分かるのです。
ただ、それが。
『寒い』とか『暑い』と言われても……なんじゃらほいって感じで。
なので、『暖かい』ってのについても分からないんじゃないかと思われそうではありますが。
これは分かります──たぶん、わたしはどこかで。
快いモノ以外のモノを、パージしてしまっているんだと思うのです。
都合のいいモノ以外を、認識しないようにしているのかもしれません。
なので、『暖かい』と言うことについては分かるのかも。
そして『寒い』とか『暑い』と言うのは分からないのかも。
──だからでしょうか。
冷たいのに、暖かいモノをよく見ているから。
冬、外に出ると。
こんなにも、ヘトヘトになるから──でしょうか。
こんな、ぼーっとしてきているときに。
雪原でばったりと倒れたら──すっごく、気持ちよさそうです。
皮膚に雪が纏って。
急速に体温と心音を奪っていって──綿雪がわたしを覆い被せていって。
じっくりと、食んでいくことでしょう。
身も心も──全て、余すとこなく。
……とか、妄想することが多くなりましたよ。
えぇ、正常です──これも雪のせいでしょう、きっと。
……春には桜のせいにしましょうかね。
あー……まだまだ啓蟄には──程遠い。