海鳥がまだ鳴いている
チェーホフと言う。
ロシアの医師であり。
小説家、劇作家でもあると言う。
鴎外とデジャビュしかねないかたがいるのですが。
大学生の頃から、気になっていて。
ずーっと、著作を読んでみたいって。
そう、思っていたんです。
当時、「チェーホフは温かい作家か、冷たい作家か」についてのレポートを書くことがあったモノで。
このお題の意味は、確か。
「チェーホフはロシア人のヒューマンドラマを繊細に書く一方で、医師らしい観察眼で容赦なく描写する一面もある。じゃあどっちか」と。
そんな、話だったかと思います。
で、わたしの回答は「どっちもじゃね?」と言うことでした。
なぜなら人には、多面性がありますし。
『裏の顔』と言う言葉もありますが。
実際には、表も裏も内も外も。
前後左右どこにでも、人格を構成する要素が存在するわけで。
その濃淡により、映るモノが。
その人にとっての顔、と認識されているだけであって。
それ以外の顔はその人自身ではない、と言うことでは。
決してない、と言う持論があるからなわけですが。
記憶だと、レポートは真っ赤になって返ってきたなぁと。
おまえのかおをまっかにしてやろうかー、と思った記憶ががが←
……と、言うことで。
最近読んで面白かった本ですが。
新潮文庫版の『かもめ・ワーニャ伯父さん』が。
面白かったなぁって、思いました。
……んー、ネタバレなのであまり言えないのですが。
『かもめ』はバッドエンドです。
『ワーニャ伯父さん』については、少し救いのあるバッドエンド。
もしくは救いのないハッピーエンド、くらいの位置付けだと思っています。
何しろ、作者のチェーホフ。
戯曲自体を、自身の逸話や境遇をモチーフに書いたようで。
最後に、登場人物に対する自身の出した答えのようなモノが。
ちらほらと、出てくるんですよね。
で、戯曲の中では最初に発表された『かもめ』は。
完全なバッドエンドであり。
次は、救いようのあるバッドエンド。
ないしは、救いようのないハッピーエンドときましたと。
と、なれば。
次の戯曲は、どうなるんだろうって。
気になってきて、しまうわけです。
登場人物に救いはあるんだろうか、と。
そして、それがチェーホフの出した答えだとすると。
彼が再生の道を選んだのか、それとも破滅の道へと向かったのか……と言うこととも、関連してくるんですよね。
まるで、太宰の『人間失格』を読んだときのような。
漱石の『こゝろ』を読んだときのような、ドキドキ感を得られるんだろうなぁって、予想が付きますので。
次の『桜の園・三人姉妹』についても。
手を付けようと、思っています。
……因みに。
『ワーニャ伯父さん』と言う作品ですが。
当初は、ある登場人物が『かもめ』の登場人物のような末路を送り。
しかもその登場人物以外の人物がみんな幸せになる、と言う。
言うなれば、幸不幸が登場人物により。
ゼロサムになっているような話だったようです。
それが、あの結末に修正されたとすると。
チェーホフ自身に某かの、転機があったのかもなぁと。
──わたしは、人様が破滅していく様を見ているのと同じくらい。
人様が再生していく様を見ているのも、大好きなんですよね。
それを、かのロシア文豪の著作から読み取れるなんて。
なんて、贅沢な経験なんだろうと思うんですよ──500円出せばお釣りが出るような金額でできるなんて、と。
なので、皆さん。
チェーホフ、お勧めします。
是非、手に取ってみては。
ところで、皆さんは──あなたは。
最近、何を読みましたか?
……え、チェーホフって温かい作家か?
それとも、冷たいか?
──もちろん、どっちもですよ。
今週のお題「最近おもしろかった本」