こんなことを言われました。
「あなたみたいになりたい」と。
なので、わたしは言いました。
「そう?わたしはあなたに経験してほしくない」と。
──どなたでも、そうだと思うのですが。
自身の地獄を経験させたいなんて。
相手が嫌いじゃない限りは。
それほどないんじゃないでしょうか。
あと、自身が得てきた甘露を。
ただで与えたいとは、思わないんじゃないでしょうか。
そのために何を行ってきたか。
どこから始めたらここまでくるか。
そのために、何を切り詰め。
何を切り捨てたか。
意識的にしろ、無意識的にしろ。
相手ができるかできないかは置いておいてやらざるを得ないことをざっと挙げただけでも。
相手のげんなりする顔が想像に難くなくて。
なんでんなこと訊くかねぇ、と。
寧ろ、こちらがげんなりするんじゃないでしょうか。
少なくともわたしは、そうでした。
なので、基本的にお勧めしないのです。
わたしと同じ轍なんて、踏まないに越したことありません。
それでもいいなら。
是が非でも、部屋の電灯の紐が切れてなくなるくらいの経験をしなくてはならないのですが。
えぇ、生きていられるといいですね。
──そう言うことなのです、わたしみたいになると言うのは。
そう言う意味、なのですよ。
あとは、そうですねぇ。
あとは、自己破産覚悟の借金を背負ったり。
あちこちで身売りができれば……あ、そうそう。
その借金は、完済しないといけませんよ。
家族には知られないようにです。
え、親族から借りる?
ダメですよ?──わたしみたいになるなら。
誰に気取られることなく借りて。
返さないと。
括るのも、同様に。
こちらから開示しなければ気付かれないほどにひっそりと実行しないといけないですよ。
そもそも、そうしないと。
成功しないですから──まぁわたしは失敗しましたが。
誰からの助けも借りなかったですが。
勝手に切れてしまったので結果助かってしまったんですよね。
その経験を、2回はしないといけません。
できますか?──じゃないと、わたしみたいにはなりません。
あ、そうそう。
その前に、精神科病棟に2ヶ月ほど入院してください。
そして、電気痙攣療法を受けるのです。
頭に電極をセットして、意図的に癲癇状態にさせる治療法ですが。
あれは、受けてみると面白いです。
受ける前と後とでは、世界の見え方が違いますし。
自分がまるで違う生き物になったかのような。
そんな感覚が拭えなくなります──個人差があるらしいですけども。
電気痙攣療法をやってもそうならない場合には。
わたしみたいには……あれ?
皆さん、どうしました?
そんな遠い目をして。
え、もういい?
そうですか、それがいいでしょう。
また機会があれば、お話しますよ。
そんな機会があれば、ね。